Libraのようなデジタル通貨はドルの座を奪えるのか?
Libraはドルに、はたまた世界にどんな影響を与えうるのか?
金融業界中心人物らが意見を述べた。
- Facebookが持つ巨大なネットワークと既存通貨との組み合わせは“脅威”になりうる。
- 主にドルに裏付けられたLibraが広く出回ることにより、世界のドル化が進み、金融コントロールが及ばなくなる恐れがある。
- Libraはイノベーションと同時に破滅的な結果になる可能性も擁している。
“Could a digital currency like Libra ever replace the dollar?” from Financial Times
<動画翻訳>
中央銀行員らは中央銀行員同士で過ごすのを好む。
なぜなら、それは大変な仕事だからだ。まるで大統領かのように。
中央銀行員以外の人は、彼らがしていることをあまり理解できない。
だから彼らはバーゼルやジャクソンホール、ワシントンで会い、相談し合うのだ。
今年のIMF年次総会では、多くの時間がLibraに関する議論に費やされた。
Mark Zuckerberg
「それこそがFacebookが人々の手に力を与えようとしている理由です。」
Facebookは、ドルやユーロのような既存資産の準備金に裏付けられた新たなグローバルデジタル通貨の作成を計画している。
中央銀行員らはこれまでデジタル通貨の検討は必要ないと考えていた。
すると、FacebookがLibraを発表。彼らも検討せざるを得なくなった。
Stefan Ingves(スウェーデン国立銀行総裁)
「この件がある程度具現化したのは今年の夏でしょう。我々もLibraについて多くの議論を重ねることとなりました。
Libraの出現は突然でしたし、少なくとも中央銀行の観点を持っているわけですから。
ですが、私にとってこの話し合いは全く新しいものではありません。
なぜなら私の国はどこでも現金なしで迅速に動いていますから。
我々はこういったことについて検討する良い機会を得たのです。」
中央銀行員らがLibraの検討に慎重な理由は2つある。
第一に、“規模”だ。
Libraのような、既存通貨に裏付けられたデジタルマネーやステーブルコインというのは他にもある。
しかし、Facebookは巨大だ。そしてどこにでもある。
Mark ZuckerbergがLibraについて議会で証言しなければならなかったのはこのためだ。
Facebookは巨大であり、巨大であることは恐ろしいのだ。
Lael Brainard(FRB理事)
「Libraプロジェクトのスピードは抜きんでており、そのネットワークは支払いの分野でも世界的規模に達し得ます。」
このスピーチがワシントンで行われたのがIMF総会と同じ週だったのは偶然ではない。
彼女はメッセージを送っていたのだ。
“そう、Facebook、私たちは君たちの話を君たちがいないところで、しかも良くない話をしているのよ“
Lael Brainard(FRB理事)
「FacebookのLibraを際立たせているのは、世界人口の3分の1以上にあたるアクティブユーザーネットワークと、国の通貨と不明瞭に結びついた民間デジタル通貨発行との組み合わせです。
FacebookのLibraが国会議員や行政機関から厳しい精査を受けるのは当然でしょう。」
Mark Zuckerberg
「Libraは主にドルによって裏付けられるでしょう。
これにより、アメリカの世界におけるリーダーシップが、我々の民主主義的価値観や管理ともに拡大していくと信じています。」
さあ、それこそ中央銀行員らを悩ませている2つ目の理由だ。
Libraは規制された既存の通貨は使わない。彼らはそれらを使って自分たちの通貨を作るのだ。
ここでの最大のリスクは、既にドル化の傾向がある小規模な経済圏が、現物ドルを蓄えていくことである。
新たなグローバル通貨がドル化やLibra化を加速させるかもしれないのだ。
Tobias Adrian(IMF Monetary and Capital Markets部門チーフ)
「本来使われるはずの国の通貨としてステーブルコインが発行されなければ、取引の大部分が乗っ取られる可能性があると言う人もいます。
その時点で、中央銀行は金融方策のコントロールを失います。
ドル化は現実的なリスクなのです。」
Simon Potter(NY準備銀行マーケット部前責任者)
「人々に大きな変化をもたらしうる媒体というのは、20億人以上の利用者がいるFacebookのようなプラットフォームです。
Libraコインには、人々が多くの価値を感じるような良いアプローチがたくさんありました。
中央銀行員らにとって難しいのは、Libraのようなものをどのように規制するかです。
私は、通貨のコントロールが政府や中央銀行にとってどれだけ重要か、Facebookはしっかりと考えていなかったのではと思います。」
結局のところ、問題は“お金とは何か”を誰が決めるようになるのかということだ。
各国はお金の供給をコントロールしようと何百年も戦い続けてきた。
彼らはMark Zuckerbergが意欲的だからといってそれを諦めはしないだろう。
Mark Zuckerberg
「金融業界は停滞しており、我々が必要なイノベーションを支えるようなデジタル金融構造もありません。
私はこの問題は解決されると信じていますし、Libraがそれをお手伝いできます。」
Stefan Ingves(スウェーデン国立銀行総裁)
「お金に関してはいつでも公共機関が発言権を握ってきましたから、完全に民間のお金が作られるというのを想像するのは難しいのです。
そして歴史から学ぶとするなら、こういった取り組みは遅かれ早かれ崩壊する傾向があります。
だから私たちには中央銀行があるのです。」
民間企業が自分たちのお金を作るとき、イノベーションも起こるかもしれないが、同時に手の施しようのない悲惨な結果にもなり得る。
中央銀行員らはそれを知っているのだ。
彼らが最近一緒にいる時によくFacebookの噂をしているのは、そのためだ。